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連載79回 いいものあげる

いいものあげる

 
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「いいものあげる」
彼は子供の頃、この言葉を聞くと喜んだ。
めったに物をくれない近所のおじさんがそう言う時は、
彼が誉められた時だったから。
私は古びたショルダーバッグ。
そういう時、おじさんは私の中から、
いろんな物を出してくれた。
キャンディー、ガム、笛、ボール、人形、ミニカー…

時が経ち、住む場所も変わり、
いつの間にかおじさんにも会わなくなった。
最後におじさんが彼にあげたのは、この私自身だった。
いつからか、私の中から出してもらったものにも、
彼は興味を示さなくなったが、
もらった喜びの記憶だけは残っていた。

大人になった今となれば、
中にはもらっても嬉しくないようなものばかり。
でも彼は満足して使っていた。

今日、ある一人の女の子が、良いことをした。
「いいものあげる」
思わずその言葉を口にした彼。
喜びの瞬間がよみがえってきた。
あげられるようなものは、何もないのだけれど。




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    作品名:いいものあげる
 

宮島永太良

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