Story : 詩と作品
連載73回 うねり声
うねり声


「赤信号では止まりなさい」
多くのクルマが規則を守り
光る信号の前で整列している。
よい光景ではないか。
みな、次の瞬間走り出すゾ!
といわんばかりのうねり声を上げて、
光の色の変わるのを待つ。
早く目的の場所に行きたい。
そんなドライバーたちの思いもよそに、
空気は徐々に温まり、
温まった空気は上へ上へと昇っていった。
上空にいるペガサスの走行を妨げるように。
目的の場所に着いたころ、
地球の上はまた熱くなっていた。
なんだか目的地に早く行くために手に入れたクルマは、
空気のストーブになっていたのかも、
と今になって気づく。
その昔、馬が目的の場所に早くつれていってくれたころ、
彼らの熱気がいかにあふれようとも、
空気まで熱くなることはなかった。
ペガサスとなった馬は、そんな光景を、
空から不安げに眺めていた。


作品名:うねり声
宮島永太良
