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◇新連載 第5回 宮島永太良とアートが気になるインタビュアーの対話

 

ここからアートステーション 第5回

=アートが気になるインタビュアー/A=宮島永太良

:それでは、今回は顔の部分の中の一つである「鼻」について語っていこうと思います。前回の耳もそうでしたが、鼻にもやはり主な二つの働きがありますよね。
:一つは嗅覚=匂いを嗅ぐということ、そしてもう一つは、呼吸を司る機関であるということですね。鼻は肺への直接の入り口のようなもので、肺に清潔な酸素を送るために、空気清浄機のような役割を果たしているとも言われます。

:鼻の中の粘膜や鼻毛がフィルター役となって、空気中からの埃やウィルスを除去し、きれいな空気だけを肺に送るというしくみのようですね。
:それを考えると、呼吸は口からもできますが、鼻からの呼吸の方がよりふさわしいということでしょう。

:口だけの呼吸はあまりよくないようですね。
:私も、時々睡眠中に口を開いてしまうことがあるようなのですが、そうした時は目が覚めると喉がすごく乾燥しているんです。すぐ水を飲まないと気持ち悪いくらいです。近頃では、睡眠中に口を開かないためのシール(医薬品扱い)も売っていて、それを使ったところ、口の中が乾燥せずに済むようになりました。

:苦しくはなかったですか。
:そうしたことも全くありませんでした。やはりちゃんと鼻で息をしているということでしょう。私自身は意識していませんが。

:しかしながら、呼吸とは本当に不思議なもので、本人が意識しなくてもしているんですよね。
:眠っている間でもできていますよね。これは脳が呼吸するように命じているからであり、本人の意識と関係なく、「脳幹」が生命維持を司っている代表的な例と言えるでしょう。

:呼吸は、鼻のもう一つの役割である「匂いを感じる」こととも関係ありますね。息を吐いている時より、吸っている時の方が数段匂いを感じやすいです。
:嗅覚というと、五感の中でも最も感情や記憶と結びつきやすいと言われます。実は私も思い当たることがあります。

 

 

作品名:顔 2007年制作 木・粘土・アクリル 21cm × 15cm

 

:どんなことですか?
:多くの人が同じと思いますが、私は生ゴミのような匂いというのがすごく嫌いなんです。その匂いをふと何かの折に嗅いだりすると、自分の恥ずかしいこと等を思い出してしまうんです。

:恥ずかしいことですか。
:はい、それも自分だけでなく人が行なった恥ずかしい言動なども思い出すことがあり、逆にあまりにも恥ずかしい場面を見たりすると、生ゴミの匂いを連想したりもします。

:それは珍しいですね。よく「クサいセリフ」などという言葉がありますが、対象となる恥ずかしさはああいう感覚ですか。
:そうです。それに近いです。あと、大勢がいる前でやってはいけない行動をしてしまうことの想像などです。今のは嫌な例ですが、好ましい例として、ブリキなど金属の匂いを嗅ぐと、子供の頃の懐かしさを思い出したりもします。

:もしかしておもちゃと関連ありますか。
:はい、私が幼少の頃は、自動車の模型、ロボット、モデルガンなど、ブリキでできたおもちゃがたくさん売っていて、私も持っていました。ブリキの匂いはあまり親しまれていないかもしれませんが、私にとっては懐かしい昔を思い出す匂いなのです。

:最近はブリキのおもちゃはほとんど見られませんが、素材として(手を切りやすい等)危険な面があるからだと聞きました。
:最近はプラスチックやビニールが多いですが、それらもそれらなりに匂いは感じるでしょうね。

:近年、認知症などでも嗅覚の低下の現象が現れることもわかっていますね。
:はい、発症に先立って、嗅覚検査をする例もあるようです。

:ゴミの匂いは嫌ですが、花とか果物とか、いろいろな匂いをかぎ分けることは、脳の刺激にもなるかもしれませんね。
:昨年「健康とアートを結ぶ会」が主催した公募展「健康をめざすアート展」でも、嗅覚をテーマとした作品が一点だけあったのは興味深かったです。

:今後は呼吸や嗅覚が、アート作品として発表されて行く可能性も多く楽しみです。

つづく

 

  
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