Road : つれtakeロード
徳島
暑さも苦境に入った7月末、宮島永太良は、四国の徳島県に足を運んだ。宮島にとっては初めての徳島だ。徳島は阿波おどりで有名だ。宮島の知人にも徳島出身者が何人かおり、皆から阿波おどりの話をよく聞いていたので、楽しみにしていた。
東京羽田から飛行機で1時間弱。降り立った徳島空港は、「徳島阿波おどり空港」というユニークな通称で呼ばれる。そこからバスで20分ほど走ると、徳島駅に到着する。バスを降りたその時、目に入ったのは見覚えのある絵だった。何人かの男女が阿波おどりをやっている場面だ。全体が虹の色で覆われている。宮島もかつて取材、展覧会でもお世話になったことがある、あの世界的アーティスト・靉嘔氏の作品であった。1993年の「第48回国民体育大会」の開催を記念して描かれ、この地に贈られたものだそうだ。靉嘔氏にしては難しいテーマではあるが、この地の阿波おどりに向けた情熱が、虹の色とともにたっぷりと溢れている作品だ。
この日は徳島もかなりの暑さだが、初めて来た徳島である。少し回ってみたい。徳島駅から徒歩で15分から20分ほど行くと阿波おどり会館がある。しかしふとその横を見ると、徳島眉山天神社があった。まずはそこで参拝。学問の神とされている菅原道真公の座像が印象深い。この天神社は、瑞巌寺の一顎和尚が、甲斐国(現在の山梨県)の恵林寺から携えてきた渡唐天神木像をまつったのが起源とされる。そして1809年、現在の地に創建された。
そして阿波おどり会館へ。この会館も、天神宮社の一環であることがわかって来る。阿波おどりの高張り提灯をモチーフにしたユニークな建物の中には、これまでの阿波おどり祭の写真や映像が流され、グッズも多数販売している。徳島では毎年8月のお盆の頃に、全国からも注目される阿波おどり祭の日がやって来るが、この会館に来ればいつでも阿波おどりの実演があり、400年の歴史を持つ阿波おどりを、地元の人にも、他から来た人にもより身近に親しめるものになっている。
「考えてみれば子供の頃から、日本の、みんなで踊る踊りと言えば、盆おどりか阿波おどりを連想していました」と語る宮島。「マルタの冒険」のアニメに登場する「ダイコン村はみがき音頭」も、その二つをミックスした編曲となっている。あと1ヶ月足らずで年一回の阿波おどり祭の開催だ。できることならその時にまた来てみたい!
そして今回、宮島も商品化で縁をもった「アールグラージュ」が徳島にも進出したというので見に行ってみた。会場となったのは鳴門市のNFT鳴門美術館。県庁所在地のある徳島駅からJR鳴門線で約40分。終点の鳴門駅に到着するが、そこから車で15分ほど行った海を望む丘に立つ美術館だ。その名の通り、デジタルの時代の新しいアート流通「NFT」を普及させる目的で、2021年、「鳴門ガレの森美術館」から「NFT鳴門美術館」と改称された。今回展示されているアールグラージュは、アルフォンス・ミュシャの作品をはじめ、プロジェクションマッピングを交えながら、さらなる幻想的な世界を展開させていた。
仲埜和男氏の発案で1995年に開発されたアールグラージュは、一枚の絵の中に、時間・季節・音楽の要素を盛り込んだ、独自の技術を持つ絵画作品であり、これまで多くの作品を手掛けてきた。仲埜氏の「ハワイの夕陽を日本に持ち帰りたい」という思いから生まれたこのアートは、やはりハワイに愛着を持つ宮島の心にも、大いに響くものがあったという。
そして、そこからさらに海に向かい、淡路島にも近い鳴門海峡のそばには、もう一つの美術館「大塚国際美術館」がある。大塚製薬グループが創業75周年事業として1998年に創立した美術館だ。陶器製の板に、西洋の名画を実物大で焼き付けた作品がならび、その数約1000点と、圧倒的な内容となっている。エントランスには、システィナ礼拝堂の実物大のレプリカとともに、ミケランジェロの天井画が明確に再現された「システィーナホール」があり圧巻だ。ルネッサンスからバロック、ロココ、近代絵画から20世紀絵画まで、日本にいながらにして、ヨーロッパの名画を鑑賞できるという驚愕の試みである。レオナルド・ダ・ヴィンチ『最後の晩餐』が、修復前と修復後とを比較して鑑賞できるのも、こうした条件だからこそかなうことであろう。
鳴門と言えば、鳴門海峡の渦潮も見てみたかった。
太陽の下で、阿波おどり、渦潮と、さまざまなリズムが沸き起こっている、活気あふれるこの徳島の地には、ぜひまた近いうちに訪れたい。
(文・写真 宮島永太良)